さとうきびを育むうえでの雑草との向き合いかた

農業をしているとどうしても避けては通れない雑草の管理。

周囲を見渡してみると、草の管理方法も農家それぞれです。畑がおかれている環境や土の性質によって、草の生え方や量、種類も変わってくるため、一概に何が適しているのかを公言するのは難しいところ。

栽培規模や卸先、売り先にもよるので、多くは地域の慣習や農家の考えに依存することとなります。

草の管理が大変なのはみんな一緒ですが、除草剤を一切使わずにとなると、労力は天と地ほどに変わります。

わたしたちのさとうきび畑では、除草剤を使っていないため、草の管理は本当に骨の折れる作業。さとうきびが大きくなって畝間が日陰となり、草が生えにくくなる8月までの辛抱です。

いまのところ、わたしたちは土手などの周囲は草刈機で刈り、畑の中は人力で引っこ抜くようにしています。

今の時期は、静寂の中で時折聞こえてくる鳥のさえずりが束の間の癒し。ウグイスの「ホーホケキョッ」の独特な響きは、特に心が和みます。

これからの季節となる梅雨に入るとさらに草の成長や繁殖が加速し、気を許すとあっという間に陣取られるので、とにかく、先手先手で取り除くようこころがけています。

※イメージ写真

草は抜かないほうがいいという意見もあります。雨風による土壌の侵食を防いだり、水はけや空気の通りが良くなったり。さらには有機物が増えたり、乾燥を防いだり、生物の多様性になったり。

でも、高温多湿の日本では草や虫が繁殖しやすく、梅雨の時期は蒸れて葉っぱの病気にもなりやすいです
全ての草を適切な高さに刈り続けるのもかなり根気がいりますし、耕うんしたとしても一時的なもの。またすぐに生えてきます。


草をまた生やしたいと思えばすぐに叶うので、特段の理由がない限りは、草自体生えないように管理しておくほうが良いというのがわたしたちのスタンスです。



草の威力を最初に痛感したのは5年前、いちばん最初にさとうきびを栽培した年です。
しばらく耕作されていなかった農地を一から整地し、草もきれいに除去してから植え付けをしました。


ところが4月の終わり、一斉にオヒシバが芽を出して、写真のような芝生状態に。

目には見えない草の種がまだまだ土の中にたくさん潜んでいたようです。

抜くにはあまりにも量が多かったので、とりあえず草削り用の鎌で何度も表面を削りとったものの、それ以降も否応なしにびっしり生えてくる草。もういっそのこと芝生みたいに生やしてしまおうかと幾度となく思いましたが、草を前にすると、心がざわついて放っておけず。


初年度は、さとうきびを横目に草むしりに追われていました。


それでも、2年目以降もなんとか前向きに取り組み続けたおかげで、年々生える量も少なくなり、いまではだいぶ手入れが楽になりました。砂地だからか、抜くと土が固くなって余計に頑丈な草が生える、ということもなく、確実に減っているのを実感できています。


お借りしている農地をきれいに管理することで、少なくとも周りに迷惑をかけずに済みますし、大家さんにも喜んでいただけます。


そういった心がけも大切にしています。

ただ、体が元気なうちはできることも、いつどうなるのかはわかりません。草むしりの労力がまるごとなくなるだけで、農家の労働環境が格段に良くなることは事実です。
除草剤以外で、環境になるべく負荷のかからない画期的な解決策が見つかることを祈るばかりです。


草の話の流れついでにいうのもなんですが、さとうきびも、実はイネ科の多年性の草です。
成長して茎が太く大きく伸びる前の状態は、ご覧のように草そのもの。

さとうきびも、きちんと手入れをして整列させてあげると、立派な作物にみえます。
少なくともわたしたちの農地では、さとうきびは、雑草もうらやむかなりの高待遇です。


さとうきびは、人間にとって何かと恩恵をこうむるひっぱりだこの草。むしらずにはいられないほど嫌われている草とは対照的です。
草は草でも全く違う扱いだなんて、なんとも勝手だなとは感じます。


それでも、さとうきびが気持ちよく育つ環境を整えてあげることが、わたしたちがしてあげられる精一杯のサポート。畑の中だけは全力でさとうきびを守ります。



草むしりは、さとうきびから商品が完成するまでの工程の一つに過ぎませんが、こうした手間ひまかけたひとつひとつの作業の積み重ねが、完成品の品質につながっていくと思っています。


そこまでしなくても、といわれたとしても。