
さとうきびを育むためには欠かせない肥料。わたしたちは毎年、米ぬかを中心とした植物性の肥料を自作しています。
前回、さとうきびの搾りかすを自然に堆肥化しているとお伝えしましたが、今回の肥料作りは、いわば微生物の力を意図的にお借りして短期間で有機物を発酵、分解させる作業。
植物が吸収されやすいかたちにあらかじめ近づけておくことを目的としています。
麹菌をスターターとした発酵の仕組み

当初は、市販の微生物資材を発酵のスターターとしていましたが、現在採用しているのは好気性にぴったりの米麹。
麹菌は好気性のカビの一種で、主にでんぷんを糖に、たんぱく質をアミノ酸に、脂質を脂肪酸などに分解してくれます。
さらに発酵を効率よく進めるうえで欠かせないのが含蜜糖。
麹菌に加え糖分を好む酵母や乳酸菌なども活発となるため、発酵を加速させるにはまさにうってつけの材料といえます。
わたしたちは、お砂糖作りで失敗した含蜜糖をここで再利用し、循環の一部としてしっかり役目を果たしてもらっています。
このように麹菌がスターターとなり、その他の微生物も追随しながら共存、またはバトンが渡されることで、有機物が一気に分解されていくのです。
発酵の進行と完成までの流れ

栄養のもととなる米ぬかや油粕などの有機物、発酵をうながす米麹、そして発酵を加速させる含蜜糖。これらの役割を持った材料をまんべんなく混ぜ合わせ、水分を適度に含ませたら、山状に積んでおきます。
3日もすると、発酵の熱で50℃を超え、全体がポカポカに。
目には見えなくても、このぬくもりこそが微生物が確かに存在している証なのです。
また、発酵が進むにつれて特有の香ばしいにおいも漂います。油粕の割合が多いと揮発成分も増え、より複雑なにおいになるようです。
その後、温度が下がってきた頃を見計らって攪拌と水分補給を繰り返すこと数回。約1ヶ月でほぼ完成となります。

肥料も循環の一部
さとうきびの搾りかすを自然に堆肥化させるのとは違い、肥料作りは、はっきりいって手間と労力のかかる作業です。量が増えるとなおさらです。
でも、お砂糖を含め、廃棄されるものを自分たちの手で再び活かすためのひと手間は、自然の循環の仕組みとありがたみを毎回この手で実感できる良い機会でもあります。肥料ひとつとってもそう。それは、ただ在るモノではなく、こうした過程を経て生まれる貴重なモノ。
土を整え、さとうきびを育み、お砂糖をつくり、また土に還る——小さな甘い循環。肥料作りもそのうちの大切な過程のひとつと位置付けて、毎年取り組み続けています。