すぐに手を差し伸べるよりも、まずは信じて見守ってあげる

たとえ同じ条件下でさとうきびを育てたとしても、多かれ少なかれ、必ず生育差や個体差が生じます。

周りと比較して同じように生育していないさとうきびを見ると、つい不安になって手を差し伸べたくなります。
昨年は生育差がいつもよりも気になってしまい、成長が遅れているさとうきびに対して、早期に植え替えや肥料の追加など、せっせと世話を焼きました。


その結果、目的は達成したのですが、すぐに対処することが最善だったのか、もう少し様子を見ても良かったのではないかという疑問も残りました。

そして今年。
発芽から2ヶ月ほど経ったとき、60mほどの長さのレーンの中の、ある箇所だけが急に調子が悪くなる事態に見舞われました。
6mにわたり、さとうきびの葉の色が薄い黄緑に変わり、下葉も枯れて成長が鈍化していたのです。
虫の影響か、肥料の流失か、はたまた病気の可能性も考えましたが、原因を特定できないまま。

原因がわからないというのはなんともモヤモヤします。

でも、とりあえずしばらく様子を見ることにしました。
明らかに調子はおかしかったものの、なんとか踏ん張って頑張っているようにも感じられたので、対策を講じる前に、まずはさとうきび自身の回復力を信じてみよう、と。


・・・・・

その後、例年通り3回目の肥料を全体に施し、そのまま梅雨に突入。2週間経っても変化が見られないままさらに2週間が経過しました。


雨のおかげでぐんと大きくなったさとうきびを遠くから眺めていてふと気づきました。
黄緑色の箇所がなくなっていることに。


近寄ってみると、問題のあったさとうきびが見事に回復していたのです。葉の色も正常な緑に戻り、成長も再び順調の模様。
肥料も今度はしっかり効いたみたいです。それにしてもいつの間に?


昨年のようにすぐに手を差し伸べるのではなく、さとうきびの力を信じて待ってよかったなと、ひとまずほっと胸を撫で下ろしました。

生育差や個体差があるのは当然なのに、育てる側に立つと、ついつい均一に育ってほしい、という意識になってしまいます。周りと違っていると、そこばかりに意識が向いてしまいます。
農業は、収量を安定させたり規格に当てはめようとするあまり、自然の中で育てていることを忘れ、作物をまるで工業製品のように扱ってしまいがち。


そういう農業のあり方とは一線を画したくてさとうきびを栽培しているのに、見た目の差にやきもきしてしまう自分がいました。
そんな私の思いを吹き飛ばすかのように、彼らは自力で立ち直り、まるで何事もなかったかのように、彼らなりのペースですくすくと着実に成長しています。



信じ切って、見守る。


頭ではわかっていても、なかなか信じるって勇気がいること。
でも、今回の件で、自分はどのようにさとうきびと向き合い、商品に活かしていきたいのか、より明確になった気がします。


均一かどうかは、あくまでも一つのバロメーターにすぎません。
本来の自然のあるべき姿にできるだけ寄り添い、彼らの可能性をできる限り信じて見守る姿勢もとても大切なのだと、改めて気付いた出来事でした。