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さとうきびの繊維質のすごさを物語る、一枚の写真



今からおよそ一年半前、2022年の1月22日。母の誕生日でもある、冬の寒い日。

服を着こんで畑に出向き、刈り損ねたさとうきびの茎を根元でカットし、そのままマルチチッパーという機械で粉砕をしていました。通常は、搾り終えてぺたんこになった茎を粉砕しています。
こんな感じに。

before

after

しばらく作業を続けていると、ポーンという音とともに、妙なものが転がっていることに気づきました。
手に取ってよく見ると、それは実に奇跡的なフォルム。


筆?箒?

しっかりと持ち手まで付いていました。
動物の毛と比べたらずいぶんとかため、ふわふわとはしていません。見た目でいうとちょうど筆の大きさ、かたさでいうと箒といったところでしょうか。さとうきびの茎の外皮だけが綺麗さっぱりなくなって、中の繊維質だけが粉砕されずに剥き出しになった状態です。


それにしてもなにがどうなったら、こんな美しい筆のフォルムに…とあまりの芸術的な出来栄えに、しばらく見惚れてしまいました。


一通り見て楽しんだ後でこうして写真におさめておいたのですが、現在、実物が手元にないということは、満足してそのまま捨ててしまったようです。
せっかくなので記念にとっておけばよかったのにな、と記事を書きながら急に惜しい気持ちになりました。


それにしても、こうして「天然さとうきび筆」の写真を目の当たりにすると、さとうきびって強靭な繊維質によって支えられているのだなと、あらためて実感します。


さとうきびが縦方向に繊維質が多い理由


さとうきびの繊維質は、樹木と同じように、主にセルロースとリグニンによって構成され、3mを超えるカラダを支えています。
わかりやすく例えると以下の通り。

  1. セルロース:
    柱や支柱のような役割を果たします。直鎖で縦方向に伸びることで強度が増し、茎をしっかりと支えます。
  2. ヘミセルロース:
    紐や綱のような役割を果たします。セミロースとリグニンとそれぞれ不均一に結合しています。
  3. リグニン:
    接着剤やセメントのような役割を果たします。繊維を外側から固めてすき間を埋めることで、茎全体をより強固にします。また、外敵からも身を守る効果があります。


さとうきびが、外部からのストレスや風などの力に対しても強い耐久性を持ち、大きく育つことが出来るのも、これらの丈夫な繊維質のおかげなのです。
ちなみに、茎だけでなく葉っぱも縦方向に凄まじい繊維です。横だと簡単にはちぎれません。縦だとスースー裂けますが。



バガスの行方

さとうきびの繊維はかなり強度があるので、搾った後に残るバガスと呼ばれる残渣は、お砂糖をつくるための燃料やバイオマスとして紙の原料に使われたり、食物繊維として食品などへも応用されています。

このバガスは収穫量の約半分の量。当たり前ですが、つくればつくるほど大量に発生します。
他の用途に再利用しない場合は、必然的に廃棄するか畑に返すことになります。ただし分解に非常に時間がかかるため、少しずつ時間をかけて堆肥化させる必要があります。


このバガスを堆肥化以外にもっと有効的に活用できるような取り組みを考えていくことは、つくり手にとっては大きな課題のひとつでもあります。

竹箒のように、さとうきび箒も今後ありえなくはないかもしれません。実際海外には既に存在しているとか…。