
ようやくここ浜松でも、冬らしい寒さが続いています。
さとうきびの収穫時期は暖冬のため年々後ろにずれ込んでいますが、今年も無事に収穫と一次加工までを終えることができました。
あらためて関わった全ての人、もの、ことへ、本当にありがとうございました。
ここで一度、備忘録として2025年度の栽培を簡単に振り返っておきます。
2025年度の取り組み
2025年度は、量や安定を求める年ではなく、育て方によって、理想とする風味にどこまで近づけるのかを確かめるための実験の年と位置付けました。
初年度から管理している畑では、ここ数年、ずっと出せなかった理想の風味。
昨年までのデータからその原因を整理し、レーン毎に実験内容を変えて、その検証に集中することにしました。
過酷な環境下

今年は結果的にさとうきびにとって今までで最も過酷な一年を強いてしまいました。
植え付けの遅れと梅雨の少雨。そして昨年を上回る約1ヶ月半におよぶ、一滴も降らない雨と高温。この環境下では多くのレーンにとって「適度」を超えたストレスになってしまいました。
「もう少し自力で頑張ってもらおう」そう思って水やりの頻度も抑えすぎたことも災いとなりました。
確かに、彼らの生命力には今年も目を見張るものがありました。
でも、適度なストレスのかけ具合を一歩間違えると、越えてはいけない一線を越えて、回復に大きなエネルギーを必要としてしまいます。抵抗力がなくなって病気にもなりやすくなったり、急な環境変化にも適応しにくくなったり。
自分に置き換えたらわかりそうな当たり前のことを軽視してしまったことは、今年の大きな反省です。
ある1レーンの奇跡

そんな中、今年も不思議な現象が起きました。
最初から最後まで肥料を入れず、雨以外の水やりもほぼせず、いわば一番条件の悪いレーン。
発芽こそしたものの、その直後から成長が停滞し、葉の色も極端に薄くなり、今にも枯れそうな状態が続いていました。
でもこのレーンは最後まで何も手を加えないと決めていたので、なんとかしたい気持ちをおさえ、昨年にならって様子をずっと見守っていました。どうなっても最後まで見届けようと。
そのまま2ヶ月ほど経ったある日のこと、1レーン全体の異変に気付きました。
突如、葉の色が濃くなっていたのです。まるで根っこが何かのスイッチを一斉に押したかのように。
そこからは息を吹き返して完全復活。
2ヶ月停滞による成長の遅れは当然ありましたが、今回の過酷な暑さや水不足によるダメージも他レーンと比べて圧倒的に少なく、終わってみれば環境に左右されずに一番健康に育ってくれました。
いろいろな要因が重なった偶然もあるので、このようなさとうきびの生命力頼みのやり方はそのまま来年に反映させることはしません。でも、今までのやり方が本当に正しかったのか、根本的に見つめ直す良い機会を与えてくれました。
加工

これまでスケジュールの都合で取り入れられなかった新たな製法も、この機会にいくつか試してみました。最終的にはいままでのやりかたで落ち着きましたが、こうあるべきと思い込んでいた加工のしかたにも、もしかしたらまだ改善の余地があるのかもしれません。ひきつづき改良に励むつもりです。
また、今回の畑で目標としていた理想の風味。全部のレーンでとはいきませんでしたが、ついに実現しました!育てかた次第では土質に影響されないと実証されたので、来年の栽培に早速活かしてく予定です。
まとめ
どんなに普段は逞しく育っていても、過度の負荷がかかれば、回復には大きなエネルギーが必要になるし、同じようなストレス下でも、それぞれ置かれた場所や個々のポテンシャルによってその回復力も違います。
それは植物も、人間も、きっと同じ。
実験と検証を重視したため、2025年度の収穫量は少なくなってしまいましたが、今後のためには必要な一年だったと思っています。
おかげでさとうきびへの理解がぐっと深まり、理想の風味にするうえでの方向性もよりはっきりと定まりました。
いままでは、さとうきびの本質や性質とそれらの加工への影響に確証がもてないなかで、できたものをそのまま受け入れるしかありませんでしたが、これからは加工に見合った育てかたをもっと前向きに実践できそうです。
こんなふうに試行錯誤を重ねながら、さとうきびの味わいは地道に毎年更新されておりますので、どうぞその年々の風味をお楽しみいただければ嬉しいです。
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。