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お砂糖 | そぎ落とすシンプルさ、そぎ落とさないシンプルさ

白砂糖も黒糖も原材料はさとうきび。いたってシンプルです。
原材料としてのシンプルさは共通していますが、加工方法の違いによって生まれる、二つのお砂糖のシンプルさの概念は全く異なります。


白砂糖のシンプルさ

白砂糖のシンプルさは、その純度の高さにあります。さとうきびからショ糖以外の成分を徹底的にそぎ落とすことで、究極のシンプルさを追求しています。
他に何もないからこそ、その純粋なショ糖の甘さは、素材の風味を邪魔することなく存分に引き立ててくれるのです。



黒糖のシンプルさ

一方、黒糖(石灰不使用)は、さとうきびの搾汁液をほぼそのまま濃縮して固めたお砂糖です。白砂糖とは逆に、さとうきびが持っている成分をそのまま保っているため、本来の自然な風味や栄養を含んでいます。


この複合的な味わいのなかにも、自然の恵みそのままの素朴なシンプルさを感じられます。


そぎ落とさないシンプルさ

黒糖のような「そぎ落とさないシンプルさ」は、一見矛盾しているように思えます。
でも考えてみると、自然界の風景や古い街並みなども、複合的な要素が完璧に調和していて、そこに何か足したり引いたりしなくてもそのままで十分美しかったりします。

余計なものなんて何もなくて、本質的な魅力がそのままある状態も、シンプルだと言えるのではないでしょうか。

シンプルさは、必ずしも余計なものをそぎ落とした状態だけを指すわけではありません。白砂糖のようなミニマルなシンプルさもあれば、黒糖のように複合的な要素が調和した自然なシンプルさもあるのです。

ところで、自然由来の製品をつくる際に、そぎ落とさないシンプルさを実現するためには、次の要素も考える必要があります。

1.自然の不確実性の受け入れ
できるだけ自然な状態を保つためには、自然の中で育まれた素材の不安定さや個体差をそのまま受け入れる姿勢が大切です。


2.最小限の加工
素材に対する最小限の加工や介入を心がけます。品質を保ちつつ素材の特性をどれだけ活かせるかが肝となります。


3.本質の見極め
素材の本質を際立たせるためには、素材への深い理解と洞察が必要です。素材の特性を見極め、最大限に活かす工夫が求められます。


4.一貫性の維持

自然な素材を使用する場合、ロット間の品質や特性の一貫性を維持するのは非常に難しいです。細心の注意と高度な管理が必要です。

このように、削ぎ落とさないシンプルさを製品に取り入れる場合、多くの工夫と深い理解が求められます。

さとうきびから生まれる白砂糖の「そぎ落とすシンプルさ」と黒糖(石灰不使用)の「そぎ落とさないシンプルさ」。

ある目的のために徹底的にそぎ落としたシンプルさを求めるか、多様な要素をありのまま受け入れた、そぎ落とさないシンプルさを豊かで尊いと愛しむか。そのどちらにもそれぞれの良さがあります。

お砂糖=シンプル、には何の違和感もないかもしれませんが、さとうきびをどう活かすのかで、お砂糖のシンプルさの概念は180度変わる、というちょっとしたお話でした。