黒糖の仲間?きび砂糖に代表される薄茶色のお砂糖とは

黒糖や白砂糖のように、単純に色で分けられてきたお砂糖。また、ブラウンシュガーといえば、主に三温糖が親しまれてきました。

しかし、昨今の白砂糖のイメージの悪さからか、きび砂糖などの薄茶色をしたお砂糖をよく見かけるようになりました。
商品名ですと、きび砂糖、きび糖、さとうきび糖、素焚糖、洗双糖、粗糖、粗精糖、粗製糖、素精糖(そせいとうは字が異なるものが複数あります)、島砂糖などなど。


一般的には、からだにやさしい、ミネラルが豊富、さとうきびの風味が活きた自然な味わい、などといった表現で、まるでいいこと尽くしのお砂糖のようです。

そこで今回は、これらのお砂糖について、いま一度深掘りしてみたいと思います。


この記事では、きび砂糖に代表される薄茶色のお砂糖を、総称して薄茶糖と呼ばせてもらいます。(きび砂糖という名称は、日新製糖株式会社さんが商標登録された商品名です)

目次

1.薄茶糖の商品名による違い

似たような見た目と商品名がたくさんあるので、何がどう違うのかわからず混乱してしまうかもしれません。

結論から申し上げると、三温糖以外の薄茶糖は、各メーカーごとに微妙な違いはありますが、基本的な製法や精製度に大きな差はありません。あとは、原材料のさとうきびの産地や粒子の大きさ、しっとり具合など、お好みや使い道に応じて選べば問題ありません。

2.薄茶糖の製法

黒糖は、さとうきびの搾汁液をそのまま煮詰めて冷やし固めたお砂糖ですが、薄茶糖は根本的に製法が異なります。
ここでは細かい工程を省いて重要なポイントのみ説明します。

STEP
不純物の沈殿ろ過

さとうきびの搾汁液を石灰で中和したあとで不純物を沈殿させ、上澄み液だけを取り出します。

STEP
上澄み液の濃縮
STEP
遠心分離機による分蜜

上澄み液を濃縮したのち、遠心分離機をつかって強制的に糖蜜を取り除き、ショ糖の結晶を取り出します。この工程を数回繰り返したお砂糖を粗糖(原料糖)と呼び、黒糖以外のあらゆるお砂糖のベースにもなります。

黒糖とは違い、蜜をぬきとることで色味もかなり薄くなり、風味もほとんどぬけてしまいます。
一方で、この水分や不純物の多い蜜をぬく工程のおかげで、輸送や保管、加工に適した安定性が保たれます。

STEP
精製と調整

この粗糖(原料糖)をきれいに整えなおしたり、さらに精製を重ねたり、振り分けた糖蜜を再添加して風味の調整をするなどして、さまざまな薄茶糖となります。

製法によるお砂糖の違いは、以下の記事で詳しく説明しています。

3.精製度

薄茶糖は、非常にわかりやすくいってしまうと、白砂糖をつくる前の段階で精製を止めたお砂糖です。

きび砂糖などの薄茶糖は、精製度が低い、精製されていない、もしくは蜜を分離させていない、などと説明している記事が散見されますが、それは正確ではありません。

実際にはかなりの精製度です。


確かに、(白砂糖よりは)精製度は低いし、(白砂糖よりは)精製されていないし、蜜も(白砂糖よりは)分離されていません。


でもそれは、あくまでも精製度が100%に近い白砂糖と比較してのお話。
蜜ごと固まっている黒糖と比較したら、精製度の違いは一目瞭然です。


薄茶糖は、蜜が残っている、含んでいるという意味で「含蜜糖」と分類されてしまうこともありますが、もともと「含蜜糖」・「分蜜糖」という呼び方は、遠心分離機で蜜を分けているかいないか、製法による違いを指すものです。

お米で例えるとするならば、黒糖が玄米、薄茶糖は7~8分づき米、白砂糖は白米といったところでしょうか。
色味の感じから、薄茶糖が玄米のようなイメージとなっていますが、実際にはそうではありません。

黒糖の仲間とされることもある薄茶糖ですが、製法や精製度からみると、むしろ白砂糖の仲間だといえます。

5.ミネラルなどの栄養が豊富?

薄茶糖が体にやさしい体に良いといった根拠として、ミネラルなどの栄養が豊富だからという記事もよく見かけます。

ミネラルほぼゼロの白砂糖と比較すれば残っていますが、豊富とまでいえるのかは正直疑問です。


メーカーが公表している数値は全て100gあたりに含まれる量です。
食品の栄養成分の数値においては、100gあたりの含有量が、gなのかmgなのかμgなのかでもかなり印象は変わりますし、そもそもその食品を100g摂取するとなるとどのくらいの量になるのかを前提に考えないと誤解を与えかねません。

牛乳は一度に100g摂取するのは簡単ですが、お砂糖を100g摂取するとなるとどうでしょう。栄養価よりもお砂糖のとりすぎを心配するレベルの量です。確かに栄養はないよりはあったほうが良いですが、質やバランスも考慮して適量をとることが何よりも大切です。

6.商品名が与えるイメージ

薄茶糖は、さとうきびという名を冠したり、自然っぽさを感じる商品名が多いです。特に「きび砂糖」という名は、いまでは薄茶色いお砂糖の代名詞のように一般化しています。

この点でいうと、黒糖のほうがむしろさとうきび糖と呼ぶにふさわしいのですが、白砂糖と同様に、黒糖も色でひとくくりにされてしまっています。


「黒糖」だと、色味のほうが強調され、「さとうきび糖」や「きび砂糖」よりもさとうきびを連想しにくいのではないでしょうか。

7.色味や風味が与えるイメージ

さとうきびの風味をもっとも感じる黒糖は、色味も濃くクセが強いなどの理由で、混ぜて使うにはちょっと扱いにくく、かといって白砂糖は体に悪そうだから使いたくない、といった需要にマッチしたのが、色味も風味も自然っぽさをほんのりと残した薄茶糖です。

人は、白いものをより人工的、茶色いものをより自然に近いとイメージします。黒糖が選択肢になく、白砂糖と薄茶糖が目の前に在ったら、つい薄茶糖に目が行ってしまうもの。


白砂糖はいつしかお店の棚の下に追いやられ、メインの棚はさまざまな商品名の薄茶糖で充実しています。メーカーも、一般向けに特に力を入れていることがわかります。

9.薄茶糖の用途

おかしづくりに使うためのお砂糖の種類は、基本的にはレシピに忠実であったほうが失敗は少ないです。
砂糖の割合や役割が大きいゆえに、種類によっては工程や仕上がりに繊細な影響を与えることもあるからです。白砂糖と薄茶糖では甘さの感じ方も変わります。

家庭料理のほうが薄茶糖の自由度は高いかもしれません。料理にコクや甘みをそこまで求めていない場合はむしろちょうど良いでしょう。コクをしっかり出したいときは三温糖や黒糖をお使いください。

まとめ

薄茶色のお砂糖は、黒糖の仲間と思われがちですが、製法や精製度からするとむしろ白砂糖の仲間であり、栄養的な価値も特筆するほど高くはありません。

イメージや雰囲気に過度に惑わされずに、食事全体のバランスを考えて、お砂糖とも上手に向き合っていただけたらうれしいです。

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