お砂糖の多様性がもたらす、「砂糖」という言葉のあいまいさ

あなたが「砂糖」というとき、どんなお砂糖をイメージしていますか。

・袋詰めのサラサラとした粉末のお砂糖
・精製された白砂糖
・甘味料全般
・原材料がさとうきびのお砂糖
・甜菜糖
・いつも使用している特定のメーカーのお砂糖

液体のシロップ


ざっと考えてみただけでも、「砂糖」はこれだけ広義的な解釈ができます。


私自身、お砂糖について何かを伝えるとき、ひとくくりに「砂糖」といってしまうと誤解を与えかねない場合もあるので、言い回しにはかなり気を遣っています。


「砂糖」という言葉の曖昧さ。


これらが生じている背景は一体どこにあるのでしょうか。



お砂糖の語源は、古代インドのサンスクリット語、「शर्करा」śarkarā(サルカラ)と言われています。
śarkarāという呼び方が徐々に他国にまで広がり、さまざまな言語に派生していく過程で発音も変わっていき
やがて英語圏ではお砂糖をsugar、さとうきびをお砂糖の成る茎という意味でsugarcaneとして分けて呼ぶようになりました。

つまり、śarkarā=お砂糖という概念が広まる中で、原材料として使用されるさとうきびもお砂糖とセットで認識され、「sugarcane」という名前がとって付けられたのです。


その後、さとうきび栽培と砂糖生産は飛躍的な発展をとげます。

各国で製糖技術を競い合っていたことから、精製度の最も高い白砂糖が主流でしたが、用途に応じてさまざまな種類のお砂糖もつくられるようになりました。

でも、どんなにたくさんの種類のお砂糖がつくられようとも、「お砂糖はさとうきびからできている」という共通認識だけはありました。

砂糖といえばさとうきび、さとうきびといえばお砂糖。

さとうきび以外の甜菜やメープル、ココナッツ、アガベなどの植物から甘味料を作る技術は、さとうきびよりもずっとあとになってからのこと。
このとき、さとうきびからつくられるお砂糖と区別するために、メープルシュガー、ココナッツシュガー、甜菜糖、などとわざわざ植物の名前がつけられたのです。


これが、「砂糖」にはさとうきびを感じさせる名前がないそもそもの理由です。



このように、お砂糖の世界はもともとさとうきびが主体で発展してきた背景があります。お砂糖の需要が高まるにつれ、さまざまな種類のお砂糖がつくられるようになり、そこに他の植物からの甘味も加わって、さらに多様性を増していったのです。
昨今では、薄茶色いお砂糖や液糖、人工甘味料なども加わり、甘味料の多様化がますます進んでいま
す。



お砂糖の多様性は、「砂糖」の共通認識を曖昧にしている要因にもなっています。


そろそろ、業界全体で、もっと理解しやすい「砂糖」の定義と分類のアップデートが必要になってきているのではないかと感じています。
お砂糖という漢字からイメージすると甘味料の総称と言い切ってしまうのもなんだか腑に落ちませんし、もはやさとうきびを必ず連想させるわけでもありません。サラサラした粉末以外のお砂糖もたくさん存在します。


「砂糖」という言葉のあいまいさ、是非ともすっきりさせたいものです。