やさしい甘さ、控えめな甘さのお砂糖ときくと、自然な甘さで糖度や精製度も低いお砂糖をイメージするかもしれません。
また、糖度や精製度が高いほど甘さを感じやすいと思うかもしれません。
でも実際は、やさしい甘さに感じるからと言って、糖度も精製度も低いお砂糖であるとは限りません。
以下は、お砂糖の種類別による糖度です。
お砂糖の種類 | 糖度 (Z°) |
---|---|
黒糖 | 77~85 |
和三盆 | 93~96 |
粗糖 | 97~98 |
きび砂糖 | 94~98(%)※ |
三温糖 | 96.43 |
上白糖 | 97.69 |
グラニュー糖 | 99.97 |
氷砂糖 | 99.95 |
この表をみると、自然でやさしい甘さだと人気の粗糖やきび砂糖の糖度は、意外にも白砂糖とほぼ変わりません。
糖度は精製度とだいたい一致しているので、糖度が高ければ、それだけショ糖の純度が高い=精製されているといえます。
つまり、粗糖やきび砂糖は、糖度だけではなく精製度もかなり高いことがわかります。
粗糖に残っている蜜の割合は全体のうちたった2、3%未満。
きび砂糖は、粗糖から精製するときに糖蜜を添加して調整したりしているため、糖度が粗糖より少し低めですが、それでも蜜の量は2〜6%未満です。
あの色味からするともっと蜜が残っているイメージですよね。
前回の記事でも示したように、薄茶色の粗糖から真っ白なお砂糖にするには、いろんな技術を駆使して、徹底した精製工程を経る必要があります。あと、ほんの少しの蜜を取り除くのが、それだけ大変だという証です。
粗糖やきび砂糖の糖度や精製度は、白砂糖なみに高いのはわかりましたが、それではなぜ、やさしい甘さ、控えめな甘さに感じる傾向にあるのでしょうか。
実は、お砂糖の甘さの感じ方は、糖度や精製度だけではなく、結晶の粒子の大きさや蜜の量、温度に加え、そのときの体調や味覚の感度、香りや見た目など、複合的な要素で変わる傾向にあります。
結晶の大きさでいうと、結晶の粒子が大きい氷砂糖やザラメ糖などは、舌にのせたときに緩やかに溶けるために、糖度のわりにそこまで甘さを強く感じません。さっぱりすっきりとしたくどくない甘さに感じる傾向にあります。
粗糖の粒子も比較的大きめなので、甘さの感じ方が控えめだと感じます。
対して上白糖と三温糖は粒子がきめ細かいので、舌にのせたときに溶けやすく、甘みをより強く感じやすくなる傾向にあります。
蜜やその他の成分の割合も、甘さの感じ方に違いをもたらします。
たとえば、粗糖やきび砂糖は、ショ糖の周りについている薄い蜜膜が、ショ糖の結晶を覆って薄茶色になっています。
ほんのわずかでも蜜膜でコーティングされていると、直接ショ糖が舌に当たるよりも甘さを感じにくくなる要因になります。
きび砂糖も、この蜜膜のおかげで甘さの感じ方は控えめですが、濃い糖蜜が添加されているのと、結晶の粒子がきめ細かい分、粗糖よりは甘さを感じる傾向にあるようです。
となると、黒糖はどうなのでしょう。
粗糖やきび砂糖よりも糖度は20%近く低く、ショ糖もたくさんの蜜で覆われているのだから、甘さもかなり控えめに感じるのではと思ってしまいませんか。
でも、グラニュー糖と甘さの感じ方はほとんど変わらないというデータもありますし、実際口にしてみると、しっかり甘さを感じる傾向にあります。
なぜなのかについては諸説ありますが、20%もの蜜に含まれているさまざまな成分の風味と合わさると、全体として複合的な甘味となることで、ショ糖だけの淡白な甘さよりも甘さを強く感じやすくなるのではないかといわれています。
糖度や精製度が低くても、ショ糖と一緒に口に含む蜜の質や量が多いと、より甘さを感じやすくなるなんて、なんとも不思議ですね。
お砂糖の甘さの感じ方を、糖度や精製度を中心に見てみましたが、一般的な傾向としての事実はあっても、やっぱり人それぞれ。
主観的な感覚や好みによって左右される部分もかなり大きいです。
注意点としては、甘さが控えめな粗糖やきび砂糖が好みだとしても、糖度は白砂糖と一緒。食べやすいからとついつい食べ過ぎてしまったり、おんなじ量でも、満足感もなかなか得られないなんてこともあるかもしれません。
この記事を参考に、自分がお砂糖の甘さをどう感じるか、どんなお砂糖が好みなのかを知り、より良い選択につながるきっかけになれば幸いです。